ISBN:9784043690015
作者:多島 斗志之
「緻密に体系化された作り話」
ただの読書メモですが、ご参考までにジョナサン・スウィフトのくだりが鬱展開を仄めかすものかと思ったら違った。よかったよかったが、「俺たた」エンデイングだった なんという残尿感…これから榊は広瀬とどういう関係になるのか小織と広瀬もまたどういう関係になるのか広瀬を支えながら小織を診療するのは可能なのか博物館の再鑑定は順調に進められるのか江馬文範は何故精神を病んでしまったのか江馬遥子はこれ以上父の病因、死因を追求するのかエリカと性行為を及んだ大窪は咎められないのかほかにエリカと肉体関係を持つ人間がいるのか小織の姉は結局どういう人なのか今までどのような家族生活でどのようなトラウマができていたのかこの先を書こうと思えばいくらでも書けるような気がした。私は精神医療の畑で頑張っていこうと思った時期もあっただけに共感する部分が非常に多かった。凄まじい参考文献に感心した。伏線回収の回想は少々くどかった病名や薬品名の説明などに時代を感じた著者の投影が見られた(江馬文範の「片目失明」、広瀬の「精神生理学と心理学の勉強」)著者の作風と回想録に対する院長先生の評価から察するとリアリティ溢れる作品が著者の理想行間から著者の自分の未来に対する不安を感じたそして著者本人が失踪して既に5年も経ったという事実に震えた...