夜間飛行
出版社:新潮社
出版日期:1956-2
ISBN:9784102122013
作者:サン=テグジュペリ
页数:283页
发布书评
精彩书评 (总计1条)
-
あらすじ： 操縦士ファビアンの搭乗機がパタゴニアを越えてブエノスアイレスへと向かうシーンから物語が始まり、その後はリヴィエールを支配人とする職場に舞台が移っていく。リヴィエールは自分の責任の重大さを認識し、疲労と緊張に耐えながら、必死に対処していく。操縦士ペルランは郵便機を着陸させた。地上で働く同僚たちを目にして、ようやく安心感に包まれた。一方、リヴィエールの部下である監督ロビノーは、ペルランの燦然とした実績の前では自分はちっぽけな人間だと感じており、自らの存在に疑問を抱くようになった。ペルランにそれを打ち明けたが、リヴィエールはロビノーの公私混同を許さず、ロビノーにペルランの処分をさせたのである。 夜発つパタゴニア機の操縦士ファビアンが暴風雨に遭った。ファビアンは必死に雷雨雲を出ようとするが、自分の方位すらつかめない。そして暴風雨で通信が途絶え、完全に消息がなくなった。ファビアンは雲のさらに上空まで上昇を試みる。通信は一時復旧したが、燃料が三十分だけだと伝えることしかできなかった。 ロビノーは、夜間郵便飛行が頓挫するであろうと思い、リヴィエールを慰めるために管理人室を訪れる。だが、すでに勝ち負けより一層価値がある物を見出したリヴィエールは、冷静に夜間飛行の続行を告げた。 以下では、原文を引用しながら、主人公リヴィエールの視点から物語の流れを紹介していきたい。 リヴィエールの事業はまるで「夜間飛行」と等しいように感じる。夜間飛行の安全な実用化を信念とする彼は航空会社という「郵便機」を操縦し、論難攻撃の嵐に渾身の力を振り絞って立ち向かいながら、暗中模索していく。それは想像を絶するほどの孤独な旅である。本当の暗闇の中をただひたむきに、深遠にあるはずと信じる目的地に近づきたい一心で、リーダーとして、一人で全社の全航空路にわたる責任を双肩に担っている。リヴィエールは命令を下し、部下たちに偉功を立てさせながら、理想を追求する喜びも伝えていく。 しかし、この年功を経た奮闘家が、自分が疲れていると知って驚くのだ。「自分が長い間、重い物体を差上げ続けてきたような気がする、いわば、休む間もなければ、果てる希望とてもないこれは努力なのだ（2章,p22）」と彼は考えた。ファビアンの機の難航によって彼は罪悪感に苛まれ、更に目標を見失い、戸惑う状態に陥った。「人間の生命には価値はないかもしれない。僕らは常に、何か人間の生命以上に価値のあるものが存在するかのように行為しているが、しからば、それはなんであろうか？」、「何者の名において、僕は行動しているのか？」（14章,p88）さえ思っていた。そんなリヴィエールは、これからいったいどこまで行くのか、そしてどこまで行けるのだろうと、読者に考えさせてしまう。 ところが、ファビアンの妻との面会をきっかけとして、その心情が変わってしまった。事務員たちの仕事や、壁に掛けてある地図を目にして、あらゆる物を超えた義務の重さが描かれている。ファビアンの妻は自分の中にある愛情が「邪魔な、利己的な姿に見えてくる」ようにさえ思い始めた。そんな彼女を観察しながら、リヴィエールは「あの女は、僕が尋ねていたものを見いだす手伝いをしてくれる」と呟き、自分の事業は「人間の死滅に対して戦っている」と思ったのである。 物語は楽観的な結末を迎えるかのように見える。ファビアンの犠牲は欧州便の同僚に勇気を与えた。深遠な瞑想から抜き出したリヴィエールの前で、ロビノーは自分の軽率さと愚かさと自覚し、変わりはじめた。また、最後には「自らの重い勝利を背負って立つ勝利者リヴィエール」という一文がある。おそらく、リヴィエールは自分自身との葛藤の末、自らの行動は単なる夜間飛行の完遂という理想の実現のためではなく、人類の尊厳の証を後世に残すことなのだということを悟り、最終的にこれが彼の力の源泉になることを意味するかもしれないと、私は考える。 『夜間飛行』は孤独や死滅と対等に向き合い、戦う人間の勇気、責任そして尊厳を語るものであると考えられる。この部分では、それぞれの側面について考察する。勇気：a) 「颶風はなんでもない。逃げ出せる。ただ、颶風に先立ってくる、あの恐怖にはまいる！」（操縦士ペルラン,3章,p28）b) 「—あれじゃあ、誰だって怖いですよ！すっかり、四方を山に取巻かれていましたからね。（中略）これがすべて真っ暗闇の中の出来事です。まるで病気みたいなものです。明りのついた町が見えだした時は、実に嬉しかったですよ」（操縦士ファビアン,11章,p68） 郵便飛行業がまだ危険視されていた草創期、他の輸送機関と速度を競う必要があった航空輸送会社にとって「せっかく、汽車や汽船に対して、昼間勝ち優った速度を、夜のあいだに失う」ことは、死活問題だった。航空路の危険に加え、夜の神秘性まで操縦士に迫り来る。彼らは、正に「夜の胸の奥底へ、わずかにその手元と機翼とだけしか照らし出さないほど小さな炭坑用のランプーフさえ持たずに、しかも平気である未知の世界の扉を肩で押開けて、分け入るようにしなければいけない（11章,p69）」のであった。恐怖という内在する感情、すなわち人間の弱点と戦っていたのである。夜間飛行はまだ実験段階であることを承知でこの事業に従事した飛行士たちの勇気と献身、人間の意志力によってのみたどり着ける自己超越の境地が描かれている。責任： 「愛されようとするには、同情さえしたらいいのだ。ところが、僕は決して同情はしない、いや、しないわけではないが、外面に現さない（中略）僕はときどき、自分の力に自分ながら驚くほどだ」（支配人リヴィエール,11章,p68） 愛より大きい力を持った義務の観念がリヴィエールを支配している。彼の戦いとファビアンの戦いが、鮮やかに対をなしているように思える。リヴィエールが命令を下す時には、操縦士がこれを実行する以上の勇気を要する。友情と人間的な優しさを求めてしまう自分の寂しさを冷徹に退け、彼は職務に忠実に、部下に服従を命じる。リヴィエールの冷徹ともとれる行動が実は非常に人間らしい。厳格なあまり、不公平だと非難を受けることも恐れない強靭さの裏には、自らの途方のない孤独と空虚を背負っており、責任感だけが彼を支えている。郵便飛行の安全な実用化に賭け、彼の献身も悲壮感が溢れるのではないかと思われる。尊厳： 「目的は、ともすれば、何ものをも証明しないかもしれないが、行動が死滅から救ってくれるのだ。あの人々は彼らの船のゆえ後世までも生き残っているのだ」（支配人リヴィエール,19章,p105） この小説中の人物は、支配人も操縦士も技師も事務員も、みな等しく奉仕者である。彼らは己の存在意義をかけ、個人を超越した、より大きな物への帰属と奉仕する。精神を律し、肉体を律し、幸福と安泰を捨て、愛する人を置き去りにするまで、義務とする危険な役割に命を捧げている。彼らは何を望むか。何もないかもしれない。しかし、そうする彼らが到達する高みは確かに存在すると感ぜざるを得ない。荒い自然と戦い、喪失と死滅を越え、人類は生きた証を永遠に歴史に刻み込み、「文明」を後世に伝承していく。このおごそかな美があるのは人間の、人間だけが持つ尊厳ではなかろうか。 「この生彩ある小説にあって、一番僕の気に入るのは、その崇高点だ。人間の弱点や、ふしだらや、自堕落なぞは、世人の親しく見聞して知っているところでもあり、また今日の文学が、あまりにも巧みに描写提示してくれるところでもある。これに反して、人間の緊張した意志の力によってのみ到達できる自己超越の境地、あれこそ今日僕らが知りたいと思うところの物ではないだろうか」（アンドレ・ジッド,序,p14） 私も、一時帰国をきっかけに、一度「夜間飛行」を体験することがあった。良い天気だったので、綺麗な星空を期待した。しかし、飛行中、果てのない暗闇しか見えなかった。まるで深海の底に沈んだように、この闇を目にすればするほど、本能的な恐怖がふつふつと湧き上がるように感じた。それを乗りきり、人類の到達点を歴史の石柱に打ち立ててきたプロメテウス子孫たちの勇気と尊厳に心が震える。文章を一字一句たどるほど、まるで自分はエンジンの音と、みっちりとした重たい金属に包み込まれるような気がする。自然の壮美と人間の華麗さを語る傑作であり、飛行士であった作者自身の実体験に基づいた貴重な一冊でもある。
精彩短评 (总计2条)
-
好想看日译本！ -
不知为何就是觉得用日语表达的很美