肉食妻帯考

出版日期:2011-11-23
ISBN:9784791766296
作者:中村生雄

作者简介

立派な袈裟を着て荘厳な葬儀を執り行い、死者に五戒を授け、戒名を与え、仏弟子として送り出す。その一方で、酒を飲み、肉を喰らい、性行為を行って、妻子を養うという、俗人の生活を営む。このような、パートタイムの「聖職者」を戴くのは、社会として、教団として、いかにも外聞が悪いはずであるが、両者とも一向に恥じる様子もなく、明治以降慣行として定着してしまった。少しでも仏教の教義に興味を持つ者なら、誰でも抱く素朴な疑問だろう。
2012年1月15日の読売新聞の書評を見て、そのような疑問を解決できるのではないかと期待して、購入し読んでみたのだが、結果は失望であった。
まず、最初に断っておきたいのは、本書は著者の死後、雑誌等へ掲載された生前のエッセイを、知人が編纂した物であり、本書の出版に著者は直接関わっていないという事である。
著者の専門は、日本思想史や比較宗教学であり、仏教を専門とする研究者ではない。従って、本書の内容も仏教の教義に照らし合わせての「肉食妻帯」の研究ではなく、歴史的な背景の説明や他の論客の説の紹介が主体となっているのも、仕方ないのである。それでも、何とか本書から有意義な情報を汲み取ろうとして、読み続ける努力をするが、雑誌記事の寄せ集めという性格上、限られたネタの繰り返しが多く、気がつくと斜め読みになっているが、時には、新しいネタも登場して、油断が出来ない(笑い)。思想史研究者の割には、仏教史の時系列や教義の論理構造の中で著者の考えを整理した記事がないので、つかみ所がなく、読んで得た知識が蓄積して行かない。
本書を読むにあたっては、少なくとも親鸞の生涯に関する予備知識が必要である他、仏教関係の知識も、ある程度は持ち合わせていないと、おそらく、内容の理解が厳しいだろう。このような本を出版するにあたっては、読者に予備知識を与える序章を設けるのが、編纂者の良心という物であるが、本書の場合、内容理解にはほとんど助けにならない、あとがきがせいぜいなのである。出版社にしても、本気で本書を読む価値のある本にしようと思うなら、その序章の中で、著者の考えを簡潔にまとめ(少なくとも仏教史的時系列で整理し)、詳しい記述へのポインタをつけて、読者の便宜を図る位の事はやっても良いはずだ。そうすれば、タイトルと新聞の書評につられて買ってしまう、私のような迂闊者以外にも、読者を獲得できると思う。現状は、専門書でもなければ、一般書でもない。強いて言えば、追悼書といったところか。こんな中途半端な本を出された故人が気の毒になる。
このようにまとまりのない本ではあるが、比較的マシな章として、140-189ページを揚げておこう。この章の最後の部分、188-189ページに著者の考え方が可視化されている。日本語として論理的におかしな部分もあるが、その趣旨は、それなりに豊かで平和な現代日本社会に身を置く日本人の多くは、仏教の深遠な智慧や慈悲業の実践に期待する必要を感じないのであり、また、歴史的に担われていた寺の役割は、いまや、学者、医師、カウンセラー、学校、福祉団体等、それぞれの専門家により執り行われているのであるから、寺の住職が妻帯しようかどうかなど、実際にはどうでも良い事である、と。
2011年3月の大震災以前の2003年に出版された記事ではあるが、現代日本人の心の荒廃は、20世紀後半から顕著に指摘されているのであり、心の救済としての仏教の必要性に考えが及んでいないのは、驚くばかりであるが、その救済のよりどころとしての現代日本仏教に、期待できる物は何もないというのであれば、同意せざるを得ない。つまり、「肉食妻帯」への疑問を「解決」する(solve)のではなく「解消」する(resolve)という事なのか?
あとがきまで読み進めると、本書が出版された経緯が詳しく記載されている。そして、上に書いたような批判への弁明もある。なかでも驚かされるのは、著者が出版を予定していた本のタイトルは「日本仏教の発生」であり、「肉食妻帯」というテーマを選んだのは、編集部と協議して、インパクトを考えての事だという。まさに、私はそのインパクトにはまってしまった訳だが、著者の考えていたタイトルなら、本書の内容を誠実に表していたに違いない。そして、敢えてそのタイトルを変更するというのなら、上に述べたような序章を設けるのは、読者に対しても、故人の著者に対しても、出版者としての最低限の礼儀だろう。そして、宗教的な議論を期待させる新聞の書評についても、評者は本書をまともに読んでいないか、そうでなければ、不誠実と言うことになる。
まとめると、宗教的な意義に関する論考を期待している人には、本書は余り価値がないが、歴史的な背景を知りたい人には、一定の価値があるだろう。
出版の経緯を知った今となっては虚しい事ではあるが、期待された宗教的な議論の一例を挙げると、
A:いやしくも「仏教」を名乗るのであれば、その究極の目的である寂静涅槃の妨げとなる煩悩を助長するような行為は、仏弟子として差し控えるのが当然である。
B:教義上妻帯を禁止されているのは「小乗」の出家者であり、大乗の僧侶がそれを守ってきたそれまでの伝統の方がおかしいのである。
A:肉食は美食につながっており、貪欲を助長するばかりではなく、食肉業者の殺生行為を助長する。妻帯は、言うまでもなく、性欲を助長し、さらに、家族への執着を助長するとともに、苦を受ける対象としての人間を新たに製造する。
B:衆生の救済が大乗の目標である。
A:だからといって、救済の援助者であるところの僧侶まで、救済対象と同じ事をやってしまって良いという事にはならない... 等。


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